• 稲岡 利彦

個人の力に頼らない会場全員接客の極意#8~最終ゴールはノークロージングに導くこと~

 会場全員接客の最終ゴールは、ノークロージングをいかに増やすことができるか。文字通りクロージングをせずとも、顧客側から「契約をしたい」と言ってくる状態であり、私が担当していた会場では30%に達していました。つまり、これまで紹介してきた様々な対応は、ノークロージングを導くためのものなのです。

 試食会の最後に、多くの結婚式の素敵なシーンをちりばめた感動映像を流し、結婚式の素晴らしさ、その会場でできる演出を知ってもらいます。この時点で半分の人が泣いている映像であるかどうかも、大きなポイント。さらに会場スタッフ全員が集まり、手を振って挨拶をしてから、クロージングのためにサロンに移動します。その時点で、感動した、料理もおいしかった、スタッフもみな温かいなどの感想が新郎新婦から出てくれば、あとは日程調整と料金の最終確認をするだけとなります。  結婚式場のセールスの場合、最初のヒアリングから日程の価値を伝える「日程一本釣り」の手法が大半を占めています。人気会場だから日程が取れない、早く押さえておくべきと。もっとも最近は、こうした言葉がセールストークであることを、カップル自身が分かっています。クロージングにおいても、日程の価値を訴求し、強引に契約にこぎつけようとしていると思われ、内覧で高まった気持ちが一気に急降下していけば、決まる可能性も低くなります。  会場全員接客では、最初のヒアリングの時に日程に関して触れることはなく、徹底的に2人のパーソナル情報の収集となります。さらに日程の価値は、顧客自身に気づいてもらうような仕掛けでもあります。朝の時間帯に多くの人を集中させる、挙式場の内覧では人がいる雰囲気を知ってもらうためあえて時間を合わせる、試食会もバンケットに集めます。新郎新婦にとっては、来館後から他にも多くのカップルが見学に来ていることを知ることとなり、会場側からあえて説明しなくても人気会場であることをアピールできています。つまり、「日程は空いていますか?」というポイントを、顧客側から聞いてくるようになるのです。  さらに、会場全員接客でアピールするのは、予算、日程、ハードではなく、会場としてのおもてなし力です。電話対応時から始まり、来館、ヒアリング、内覧、試食会と、会場全員のおもてなし力を見える化して伝えていく。例えば、試食会で小さな子供を連れたゲストがいるという話を黒服が聞けば、そうした情報もクロージング前までに全てプランナーに伝わっています。クロージング段階で、こうしたゲストへの配慮を少し説明するだけでも、会場全体としての情報が統一化され、かつレスポンスが早いことを理解してもらえます。それもまたおもてなし力であり、こうした積み重ねを仕組化することで大きな差別化になるのです。そのため、日程、料金に関しては、クロージングのための武器ではなく、あくまでも確認事項の一つに過ぎないという考え方となります。 (詳細はブライダル産業新聞紙面にて、7月1日号)

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